日本旅行業協会の新町光示会長が、2月初旬にミッションとしてグアムを訪問した際に、グアムの観光地を視察した上で、「グアムの自然や文化を体験できるものを構築し、リゾートとしてのグアムのあり方を中長期的に見直しては」と提案している。現地の関係者からも、「グアムはこれまで、島外で生まれたコンセプトを導入することで観光産業の発展を図ってきた。しかし、施設が十分整った現状で、今後さらに発展するには新たな概念を導入すべきだ。それには、自然や歴史・文化といった、これまであまり省みられていなかった“グアム固有の魅力”を見直すことが良いのでは」との声が挙がっている。これを受けて、グアム政府観光局(GVB)でも「Enjoy Guam Way! グアム流のリラクゼーション方法の提案」をテーマとしたマーケティング活動を実施している。
では、実際にグアムの自然、歴史・文化にはどういった魅力があるのだろうか。また、観光に反映させるにはどういった方法があるのだろうか。
ラッテストーンなどの遺跡、土産物、料理、そして現地で暮らす人々から、グアムを訪れる観光客は「チャモロ」という文化がグアムにあることに気付く。しかし、チャモロ文化の存在は知ることができても、それがどういったも
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| 倉品教授 |
のであるかまで詳しく知る機会は、これまであまりなかった。「グアムには、紀元前1500年頃から、3500年間も人類が営んできた歴史がある。グアムに来ているのに、それに目を向けないのは、なんとももったいない」と、グアム大学で太平洋の考古学を研究するヒロ倉品教授は語る。
そこで、倉品教授監修のもと、Q&A形式でチャモロ文化を学んでみたい。特に、マゼランがヨーロッパ人として初めてグアムに到達した1521年以前の古代チャモロ文化にはまだまだ謎が多く、大変に興味深い。これにより、チャモロ色の濃い旅行商品の造成、ホテルやレストランでの演出、カウンターでの消費者へのアドバイス、ガイド内容の充実等といった形で反映できれば、グアムの魅力の再構築につなげることができるだろう。
古代チャモロ人がグアム島を含むマリアナ諸島にやってきたのは、今から約3500年前の紀元前約1500年。チャモロの言語が、マレー語等と同じオーストロネシア語族に所属すること、本来グアムに生息しない植物や動物が繁殖していること、土器の技術や模様から、フィリピンやインドネシアなど東南アジア方面からやってきたと推察される。さらに、遺伝子学の進歩で、東南アジアだけでなく、中国や台湾、そして日本との深い関係も明らかになってきている。このことを日本人旅行者に知ってもらえると、よりチャモロに親しみを持ってもらえるだろう。
なお、彼らはその後も、故地である東南アジアと、広大な海原を越えて交流を続けていたフシがある。それを裏付ける興味深い証拠がインドネシア・ジャワ島のボロブドール遺跡に存在。壁画に、グアム島で使われていた土器と形がよく似た器が描かれ、その隣にはマリアナ固有の鳩が2羽とまっているのだ。海洋民族チャモロ人の壮大な足跡にはとても驚かされる。
現在、グアム島内には、スパやホテルの客室など、バリ島のテイストを持つファシリティーが多く存在する。太古からの交流の歴史がもっと知られるようになれば、それら施設のコンセプトがより説得力を持つようになるだろう。
食生活としては、タロイモや米、ブレッドフルーツ(パンの実)を主食としていた。また、古代の住居跡から魚の骨、貝殻、コウモリの骨、亀の骨などが見つかり、これらも食料としていた。
レストランなどが多く存在し、世界各国の料理を楽しむことができるグアムのグルメシーンだが、「チャモロ料理などグアム特有の味については印象が薄い」と言われてきた。今後は、観光客に向けたグアムの食文化も、そのあり方を見直さなければならず、その意味で古代の食生活は注目だ。
調理については、家屋の裏に台所が作られていたと見られ、食べカスの付いた土器の破片や、火で変色した土壌が発見されている。今でも、屋外にキッチンを設けている家は多い。
また、グアムでオプショナルとして人気があり、ディナーメニューとして定番の「バーベキュー」も、古代チャモロの名残りと考えると、その魅力に深みが増す。無国籍的なコンセプトよりも、由緒あるチャモロ料理ということをアピールすべきだ。
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| ラッテストーン |
太平洋の島々では先史時代、巨石を使った建造物が作られ、「巨石文化」が栄えた。また、ムーという想像上の大陸について様々なストーリーが流布していることもあって、美しい海と並ぶ、日本人が太平洋の島々に対して感じる魅力となっている。
ラッテストーンも、その巨石文化遺構の一つ。ラッテストーンが、何のために、どのような目的で建造されたのかは謎が多く、学者によって、墓地説、祭祀場説、家屋の礎石説など、様々な説が挙げられている。チャモロの人たちは、今でもラッテストーンには「タオタオモナ」と呼ばれる祖先の霊が住んでいると信じて、決して近寄ろうとしないことも、ミステリーを増幅させる。
なお、近年、倉品教授らの詳細な分析により、ラッテストーンは、家屋の礎石であったことが明確になってきた。その証明に一役買ったのが、先にも述べたインドネシアのボロブドールだったから面白い。ボロブドールの壁画に、前出のマリアナ諸島と東南アジアとの交流を伺わせる土器とマリアナ固有の鳩とともに、ラッテストーンとみられる土台に支えられた家屋が描かれているのだ。これにより謎は解けてきたが、代わってボロブドールに描かれていたという壮大なロマンが生まれたため、ラッテストーンの魅力は前よりも増すこととなった。
ラッテストーンはそのほとんどが海岸沿いで発見されており、タモン湾のホテルエリアでも見つかっている。アウトリガー・グアム・リゾートでは、ラッテストーンを敷地内で保存。ホテル・ニッコー・グアムも敷地内に保存しており、主に子供をターゲットとしたプログラムを作って見学ツアーを行った実績もある。さらに、タモン湾の南部にあるイパオビーチは、最古の村の一つがあった場所と見られており、ラッテストーンを始め多くの遺物が発見された。なお、以前よりイパオビーチパークの整備が計画されている。本格的に実施されるのであれば、そういった要素を考慮した施設として再整備し、今までにない観光スポットとして生まれ変わることを望みたい。

 
年々人口が増え、日本人の旅行の一形態として認知されてきた「トレッキング」。グアムでも、島自体の魅力を体験するのに最適なアクティビティとして、最近注目を浴びている。グアムにて「ケン・芳賀のグアム探険トレッキング」を催行するケン・芳賀氏は、「トレッキングを通じて、グアムが70%以上のジャングルに包まれた大自然、その中に埋もれている文化と歴史が存在していることを知ってもらいたい」と語る。
700万年前、火山の爆発によって生まれたグアムは、長い年月をかけて地盤の隆起を繰り返しながら石灰岩の崖、赤土の砂漠やダイナミックな滝、数々の洞窟、ジャングルを流れる小川、美しい山々といったさまざまな景観を造りあげた。このため、グアムのトレッキングは、世界的にみても優れているといわれる。グアムを取材した「山と渓谷」社の取材記者が、「これまでのカナダ、ハワイ、オーストラリアなどを体験したが、グアムほどトレッキングというにふさわしい場所はない。ホテルから僅かな時間でコースに入れ、そこにはありとあらゆるジャングル、谷、川、滝、洞窟などが至る所にあり、それらが上手く合わさって、決して飽きることがない」と語っている。
「なぜ、グアムでトレッキングなのか」という問いに関して芳賀氏は、「“癒しの島”であり“非日常の島”であるグアムを体験するには、トレッキングが最適だからだ」とする。グアムは年間100万人を受け入れる自力はあるが、旅行者はグアムが実は“癒しの島”で“非日常の島”であることにあまり気付いていない。「そのためには、草木や小川や滝、洞窟に接し、大人は昔の子供時代に戻ることができ、子供は本当の冒険を堪能できるトレッキングが適している」としている。
グアムトレッキングでは色々な体験ができるという。まずは「探険ゴッコ」を老若男女に関わらず誰もが体感でき、これは“閉じこもり”の子供を更生させたほど効果がある。父親は子供にアドバイスをし、子供は父親のイニシアチブを隙間見ることによって親子の仲が急接近でき、夫婦が手に手をとって歩くとき忘れていた連帯感を思い出す。ジャングルを歩けば、ディズニーランドより遥かに規模の大きい冒険の世界に飛び込める。滝つぼへジャンプしたり、洞窟を探険すれば自分の野性を思い出すことができる。
コースについては、グアム全体では80コースはあり、それらが全部景観が違うという。初級、中級、上級の各コースがあり、具体的には「ファイファイビーチと真水の洞窟」、「フォンテリバーとフォンテダム」、「フムヨンマングロウ山」などがある。
グアムのトレッキングにおいて、芳賀氏は、今後の課題として「専門のガイドを養成すること」を挙げ、「古代遺跡を破壊したり、貴重な木々を伐採したりして酷い。自然を案内するのに自然の素晴らしさを歪めるのは哀しい。グアム全体で、しっかりと真贋を見極めながら、トレッキングを育てていく必要がある」と語っている。
自然環境を体験する手段として、バードウォッチングがある。国内でも盛んに行われているが、その興味は海外の鳥類にも向けられる。十分に旅行目的となりえるテーマだ。なかでも、豊富な種類、それぞれがカラフルな容姿を持つといったイメージがあるためか、南国でのバードウォッチングには、ある種の憧れがあると言ってよい。しかし、グアム本島にはあまり鳥がいないのだ。大きなジャングルが広がる、自然に囲まれたグアムでなぜ?
ココスアイランドリゾートの杉山博史総支配人によると、「グアムに鳥がいなくなった大きな理由は、“ブラウンツリースネーク”という蛇が繁殖してしまったため」という。「かつては、グアムにももっと鳥がいたが、グアム島の外から持ち込まれたブラウンツリースネークは、天敵がほとんどいなかったため、島中の鳥類を駆逐する勢いで大繁殖してしまった」(杉山氏)
しかしながら、グアム南部にあるココス島では、蛇がいないため、昔はグアム本島でも見られた自然の鳥類を観察することが可能だ。常駐の鳥や渡り鳥など、多くの鳥類が棲息するが、その中でも、杉山氏が「ココス島のシンボル」として挙げるのが「シロアジサシ」。島をねぐらにするチドリ目カモメ科の鳥で、英語名は「ホワイト・ターン」。純白の容姿と、いつもツガイで仲の良いことから、縁起の良い鳥とされる。ウエディングおよびハネムーンの人気デスティネーションであるグアムにふさわしい鳥といえよう。そのほかアジサシでは、クロアジサシも見ることができる。
常駐の鳥としては、ムクドリ科のカラスモドキ(マイクロネシアン・スターリング)も愛らしい。カラスより2回りくらい小さな黒い鳥で、黄色い目をしている。ココス島のレストランでは常に見ることができる鳥だ。
また、キアシシギ、キョウジョシギ、またはチュウシャクシギなどのシギ、クロサギ、チドリ科のムナグロなどの渡り鳥もやってくる。グアムが渡り鳥の飛来地であることは、あまり知られていない。シベリア北東部から、1万キロ有余の距離をはるばる渡ってくる渡り鳥は、地球規模の大自然の雄大さを体感させられる。ツアーにおいて、そのストーリーを紹介するだけで、多くの人が興味を抱くに違いない。
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