2001年9月に起きた米国同時多発テロ事件で激減した海外旅行需要は、徐々に回復傾向にあったが、今年に入ってのイラク戦争、重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響、とくにSARSはアジア地域を中心に海外旅行需要全体を減少させた。米国同時多発テロ事件と同様に、日本人の回復具合に世界と比べて鈍く、各デスティネーションともに、リカバリーキャンペーンを実施して、日本人旅行需要の回復に懸命だ。これらに加えて、昨年末に台風の影響を受けたグアムは、厳しい環境に立たされているが、9月の日本人旅行者数は前年並みの水準に戻っているという。グアム政府観光局(GVB)では、10月の新年度からブランドイメージの向上をキャンペーンの中心に据える。初心に帰り、グアムがビーチリゾートして再生を遂げることができるか、今後が注目される。



 財団法人日本交通公社は2003年(1〜12月)の日本人海外旅行者数について、前年比18.1%減の1353万人になると予測している。同財団では、海外旅行者数は年初には過去最高水準に達すると予測していたが、イラク戦争、SARSの影響から、5月を底に需要は回復しつつも年内は影響が残ると分析している。四半期で見ると、7〜9月期は前年同期比20.5%減、10〜12月期は同7.2%減で推移すると見ており、2003年通年では同18.1%減の1353万人との見通しを示している。
 SARSの影響が直撃した4〜6月期の出国日本人数は、同48.1%減の195万人で、前年同期より180万人減少するという非常に厳しい状況だった。同財団によると、四半期計が200万人台を下回ったのは、年間海外旅行者数が現在の約半数だった1988年以来のことで、15年ぶりとなる。月別では、3月12.4%減、4月42.0%減、5月55.6%減、6月46.4%減(速報値)。
 一方、日本旅行業協会(JATA)がまとめた主催旅行会社5社(JTB、近畿日本ツーリスト、日本旅行、ジャルパック、阪急交通社)の海外パッケージツアーの2003年4〜6月実績によると、5社平均で、4月実績は前年比49.5%減、5月は67.3%減、6月は638%減で推移しており、いかにSARSの影響が厳しかったが物語る。
 当然、アジア・中国方面が最も影響を受けたが、グアム・サイパンも4月37.2%減、5月62.9%減、6月61.8%減と5、6月にはSARSに関係なくも大きな影響を受けた。
 これらの数値とグアムを比較すると、グアムは4月が36.3%減だったものの、5月が49.6%減、6月が48.2%減で、5、6月は約5割減だった。しかし、7月は2
1.5%減まで持ち直し、8月も回復に向かい22.1%減、9月は前年並みまで戻っているという。

「近・短」活かし低価格脱却を

 アジア地域を中心に、各デスティネーションがリカバリーキャンペーンを展開している中で、日本人旅行者の回復具合は、世界と比べて鈍いものの、回復傾向にはある。グアムにおいても同様で、9月は旅行会社の努力もあって前年並みに戻り、10月以降も需要の回復が期待される。
 ただ、問題は需要は戻りつつあるものの、低価格化がさらに進行していることだ。米国同時多発テロ事件の時もそうだったが、需要回復を優先すれば、どうしても価格は低く抑えられる。仕方のない面もあるが、需要が回復した時に、価格のボトムを上げることが非常に難しくなるという課題を抱えてしまう。
 とくに、グアムの場合、「安く行ける海外ビーチリゾート」のブランドイメージが、残念ながらつきまとっている。このため、GVBは10月から始まる新年度で、ブランドイメージの向上へと動き出すことを明らかにした。
 ハワイを例にとると、ブランドのイメージアップは並大抵のことではいかない。日本人旅行需要の長期漸減傾向が続いたハワイでは、アジアの新興ビーチリゾートとの競合の中で、新たなブランド構築を図ったが、実際には「ハワイ=ワイキキ」のイメージを払拭することに苦心を続けている。
 グアムも同様で、「安・近・短」の海外旅行の傾向の中で、「安く行ける海外ビーチリゾート」だったからこそ、グアムへの日本人旅行者が伸びたという事実がある。したがって、2004年度を新年度として、ブランドイメージ向上に地道な努力が必要になってくる。

熟年が評価するグアムの自然

 まず、ブランドイメージ向上のためには、多くの旅行者層に受け入れられるデスティネーションとなる必要がある。若者や若い女性層を量的確保の意味からは重要な存在だが、これだけでは質的向上を目指すことはできない。
 とくに、海外旅行市場の一つの中心として熟年市場が拡大することを踏まえて、これに応えるデスティネーションになることが、ブランドイメージ向上に直結する。
 グアムでは、早くから熟年市場に注目し、「ロマンスグアム」などのプロモーションを展開してきた。熟年でグアムを体験した旅行者に聞くと、グアムの魅力を再認識した人々が多い。これが、一つの足がかりになろう。
 「実際にグアムへ行ったらとてもリラックスできた」という熟年を中心とする感想が強みとなる。とくに、海、山を始めとするグアムの自然が素晴らしいという声が多く寄せられたという。
 日本全国にテーマパークはショッピングモールが出来てくると、これらは重要な観光素材ではあるが、海外旅行に出掛ける動機としては、グアムならではのものが必要になってくる。その意味で、自然の需要性は今後さらに大きくなってくるだろう。

健康志向にスポーツも観光要素

 もう一つ、グアムで今後大きく変貌することが期待されるのは、スポーツアクティビティの存在だ。グアムでは、スポーツ施設の充実に努めているが、今の日本人にとって重要な要素として、自然とともに健康がキーワードになっている。
 現段階では、スポーツと言えば、スポーツイベントを開催することに主眼が置かれがちだが、その後に来るのは、旅行に行って自然に親しむとともにスポーツを個々にエンジョイすることが加わってくる。
 グアムでは既に、サッカーのJリーグチームや日本の水泳代表が合宿するという団体が先行しているが、これが、いずれ個人を誘引する可能性がある。この時、日本から3時間で行ける強みが発揮できる。
 グアムに行けば、自然を堪能し、健康的にスポーツを楽しめる。そういうブランドイメージが構築できたら、新しいグアムに再生するのではないか。

ウェディングも秋から回復

 グアムには様々な魅力がある。ウエディングもその一つだ。
 グアムの海外ウエディングは、2003年には世界情勢などの理由により厳しい状態が続き、4〜6月が影響を受けたが、今秋から戻り始めており、2003年下期は順調に推移すると予想され、2003年通年では、1万組のウエディングが期待されている。
 グアムが地理的に近いことで、短い日程でも時間を有効に使え、かつ旅行代金を抑えられることが評価されている。さらに宿泊施設、観光施設、アクティビティが充実していることが、コンシューマーがグアムを選んだ大きな理由だ。
 今後については、ソフト面の一層の充実していけば、マーケットはさらに成長が見込める。

成長するグアムの修学旅行

 修学旅行マーケットも、今後の成長分野の一つだ。自然体験プログラム、「英語圏」の強みを発揮して、教育旅行、修学旅行の旅行先として、グアムへの注目は年々高まっている。2002年度のグアムを含むミクロネシアへの修学旅行(日本修学旅行協会調べ)で、件数が前年度比325%増、人数が619.3%増と大幅な増加をしめしていることは、マーケットは着実に拡大していることを示している。その要因としては、アクセスの良さ、費用面、気候の良さ、安全性」などが評価されている。
 修学旅行の実施時期を決める場合、気候の良さは、グアムの利点といえる。海外修学旅行の実施時期は、10月b11月に集中しているものの、入学試験や学校行事との兼ね合いで決められている。一方、グアムの気候は海洋性亜熱帯気候で、平均気温は27℃、年間を通じて温度変化が少なく、1年中が旅行のベストシーズンといえる。このため、学校側の都合の良い時期に、旅行を行うことができる。
 親も学校側も、旅行先が安全であることは最も修学旅行目的地選択の重要な要素だ。グアムが、アメリカの準州であり、情勢が安定しているとともに、法制度が確立していること、またホテルロードには交番が設置され、宿泊施設もセキュリティ体制を整えていることは強みとなる。また、衛生面の良さと医療面の充実もSARSの影響を見ても分かる通り、重要な要素となる。
 団体旅行もグアムにとっては、重要なマーケットだ。GVBはグアムへの団体旅行促進プログラムとして、「2003グアム団体旅行イベントサポートキャンペーン」を実施している。職場単位の旅行や特定の目的を持った人々が団体旅行を企画するといった傾向が強くなっている昨今の団体旅行では、参加者全員が一緒に行うイベントが日程中に取り込まれていることが多く、今回のキャンペーンでは、そのような団体旅行のイベント開催費用をGVBがサポートする。
 こうしてみると、グアムがこれまでの低価格中心のパッケージツアーから脱却指定校という姿勢が、いくつもの市場から伺われる。こうした試みを中期に進めていくことで、ブランドイメージも向上されてくる。
 しかし、これを成功させるためには、現地が変わらなくてはならない。グアム全体が足並みを揃えて、ブランドイメージ向上を統一的に行動することが、成功のカギとなるだろう。