2001年11月12日

 「JAL・JAS連合」と全日空の「2強時代」到来か
 統合実現すれば、旅行業界も再編が加速

 
11日に一部新聞、テレビが報道した日航と日本エアシステムの経営統合は、以前から噂に上っていたとはいえ、航空業界のみならず各界で大きな衝撃が走った。11日の 未明には両社の担当者が出社し対応に追われた。
 全日空を含む航空3社は国土交通省(旧運輸省)が進める航空業界の規制緩和・競争促進の流れの中で、事業計画を推進してきた。つまり、「45−47体制」、いわゆる 「航空憲法」の見直しによる日航国際線・一部国内幹線、全日空国内線、JAS一部国 内幹線・国内ローカル線のすみ分けが崩れ、国際線複数社体制、国内線ダブル・トリ プルトラック化、運賃自由化という国土交通省の規制緩和政策の中で、航空3社は事業を展開してきた。
 規制緩和の背景には時代の流れという世界全体のグローバル化の波に乗るという大 きな背景はあるが、それよりも、全日空、日本エアシステムは国内線で、日航は国際 線で事業拡大が望めなくなってきたことが大きな理由の一つとしてあげられる。しかし、国際線に進出した全日空は国際線単体では慢性的な赤字体質から脱却できず、国 際線を黒字体質に転換することが全日空の最大の課題であることを認めている。
 国際線に遅れて進出したJASはさらに深刻で、シンガポール線、ホノルル線も運休、中国線に特化した形で国際線を運航しているが、ハーレクィンエアへの国際線移 管も暗礁に乗り上げ、今後の国際線事業計画もはっきりと打ち出せない状態が続いて いる。慢性的な赤字体質のJASの累積赤字は百億円強に達しており、もはや単体では 経営改善は望めないとみられていた。
 日航は数年前にホテル経営に失敗し、資本準備金を取り崩して経営を維持し、その後、航空需要の回復で経営安定化を図ったが、今回のテロ事件で主力の国際線が打撃 を受け、来年3月期には400億円の赤字に再度転落する見通しとなっている。
 こうした状況の中で、国内航空市場では強固な国内線基盤を持つ全日空に対して、 日航と日本エアシステムは遅れを取り、国際航空市場では日航は米系航空会社との路 線・運賃競争で厳しい戦いを強いられてきた。
 日航とJASが統合すれば、国内航空市場では旧国内幹線とローカル線が一つになることで、全日空とほぼ市場を2分することができる。また、国際線では日航の優位は 揺るがず、スターアライアンスに加盟して市場維持を図る全日空に対して攻勢を仕掛 けることができる。
 ただ、これまで国土交通省が航空3社体制を維持してきた最大の理由は、最低3社なければ、競争促進はできないからで、「日航・JAS」対全日空の「2強時代」になれば、今後競争促進ができるのか疑問が残る。スカイマークエアラインズや北海道国 際航空が航空3社とは比較にならない経営規模の中で運営している現状では、「2強」になれば、さらに寡占化が進むことも懸念される。
 日航が特殊法人から民営化される時、一部には日航を分割して航空3社の経営規模を平準化して競争させる意見もあったが、経営規模・体質をそのまま残したことが、 競争促進を阻害したと見る向きもある。
 現段階では報道が先行しており、日航、JASともに経営統合は選択肢の一つだが、 具体的なことは明らかにされていない。仮に、航空業界で日航とJASが来年秋に統合 されると、2003年1月の旅行業界の近畿日本ツーリストと日本旅行の合併とともに、 航空業界、旅行業界ともに「2強時代」に再編されることになる。この流れの中で、 航空会社と旅行会社が系列化されるのは間違いなく、とくに日航グループの航空会社 やJALセールスネットワーク、ジャルパック、ジャルストーリー、JASグループの航空会社、旅行会社、東急観光なども再編される。
 したがって、日航とJASの経営統合は両社だけに留まらず、航空・旅行業界を再編の波に呑み込んでいくことになるのは間違いないだろう。


12日、その他の主なニュース
<トップニュース>
★JALとJAS、経営統合へ向け最終調整
 両社「様々な選択肢を検討」とコメント  
★「JAL・JAS連合」と全日空の「2強時代」到来か
 統合実現すれば、旅行業界も再編が加速
<行政・関連団体>
★JOPA、“わが国におけるクルーズ振興”で提言
<旅行関連>
★海外旅行業況感は大幅悪化、3ヶ月後も悲観的
 JATA-DI調査、主催・団体・個人とも見通し立たず
<航空関連>
★成田一シカゴ一時休止、ワシントンは小型化
 ANA冬期の事業計画変更、成田一大連等増便
★AAL、成田―シアトル・関西―ダラス線運休へ
★サベナ運航停止で欧州各社ベルギー線増便の動き
★AAL、TWAフライトコードを自社コードに統一
★ノースウエスト、特典旅行オンライン予約開始
★米国人乗客10人に9人が「空の旅は安全」と回答
 ボーイング社が航空旅客調査を実施
<デスティネーション>
★スペインより J・コスタ通商観光庁長官来日
 安全面強化、日本人旅行者の重要性を強調
★ドイツ観光局、トレインジャック実施中
★ロンドン観光局、Webサイトをアップグレード
<ホテル>
★マウナ・ラニ・ベイ・ホテル&バンガローズ
 各種特典付きリゾート体験宿泊プラン設定
★マンダリン香港が英国紙でベスト海外ホテルに
<組織・人事>
★NWA、成田旅客サービス本部長に松井氏
●訃報 山野元東急観光専務の妻、ふくさん
■為替市況(9日)

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(c)航空新聞社 2001

当ページのニュースは、日刊民間航空・旅行E-MAILニュース「日刊旅行通信」
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